Whatever choice you make

あたまのなかのことばたち

おもひでぽろぽろ/高畑勲

夏になるとみたくなる映画がある。

高畑勲監督によるジブリ映画「おもひでぽろぽろ」だ。

気づけばわたしは、ずっとおばさんだと思っていた主人公のタエ子よりも年上になっていた(ていうか、かなり老けたキャラデザだと思う。実際の27歳ってもう少し見ため若い)。

この映画の「現在」は1982年で、こども時代は1966年らしいのだけど、1995年頃に小学生時代を過ごしたわたしでもタエ子と共感することは多くて、この映画をみるとこども時代を思い出す。

長らく完璧な映画だと思っていたけれど、あらためてみると、タエ子が農家に滞在してからの回想はやや急に感じることも多い。

ていうか、人と一緒にいるのにこの人は自分のこども時代のことばかり思い出している…。現実には一緒にいたくないタイプだ。

とはいえ、序盤の回想シーンの差し込み方はかなりうまいので違和感はない。

最近みた「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の回想シーンの差し込み方もオリジナリティがあってすごかったけれど、こちらも全然負けていない。

 

印象的な回想シーンの差し込みというと、映画がはじまってすぐ、上司に休暇の許可を得るシーン。

山形の田舎に行くという説明を、「田舎に憧れてるんです」というタエ子のひと言から、タエ子が小学校5年生だった頃の回想に一気に飛ぶつなぎ、が抜群にいい。

夏休みにどこへ行くかと話す小学生女子たち。いつの時代も同じだ。

わたしも夏休みは毎年、父以外の家族で母方にあたる大分のおじいちゃん家へ行くのが恒例になっていた。

だから、「田舎」という存在に猛烈に憧れるタエ子の気持ちはなんとなく心苦しい。

田舎ってね、なんとなく、あったほうがいいんです、こどもの時分には。

(ところで、ここでタエ子とお母さんが話しているんだけど、通信簿をタンスにしまう動作など、演出が細かいしリアリティがある。わたしの通信簿も、なくすからという理由で休暇中ずっと母のタンスにしまわれていた。)

田舎には行けなかったタエ子だけれど、おばあちゃんと一緒に熱海の大野屋へ行く。

この場面も、大分のおじいちゃん家に滞在中、毎日のようにあちこちの温泉に連れていってもらったことを思い出す。

 

回想シーンのうまさもさることながら、この映画、カット割りも絶妙だ。

めずらしいパイナップル(切れてないパイナップルを家で食べるなんて、いまでもめずらしいと思う。)を父が買ってきて、みんなで食べるシーンで、それぞれが口を開けていく顔のアップがつながれていくのだけど、これがうまい。

期待はずれだったパイナップルを、姉2人はいらないと言ってタエ子にあげるのだけど(もちろんタエ子もおいしいと思っていない)、おいしいと無理につぶやいて黙々と食べ続けるタエ子の姿もせつない。

あんなに期待していたパイナップルがまずいなんて、どうしても諦めきれないというか、残せないというか、こどもってこういうとき、意地を張る。

 

野球の試合後、タエ子に片思いしているというヒロくんがタエ子にはじめて話しかけたとき。

「雨の日とくもりの日と晴れと、どれが一番好き?」と問うヒロくんに「くもり」と応えるタエ子。

そこへストライクを受けるキャッチャーの画がインサートされて、ヒロくんが「おんなじだ」と言う。

そのインサートがすばらしい。

 

それからはじめてこの映画をヘッドフォンをつないでみたのだけど、これが正解だった。

前述のパイナップルを食べるシーンで、ひとり残されたタエ子なのだが、テレビをつけるぶちゃっとした音が鳴って、テレビから音楽が流れているという体になっている。

アニメなのに、芸が細かい…。

しかもこのとき流れる曲の歌詞が、「どうせだますなら死ぬまでだまして」だ。

パイナップルへのタエ子の思いを代弁しているようだ。

当時の流行歌も随所で流れるのだけど、タエ子が山形への土産を買うシーンなんて、「ライディーン」だ。はじめて気づいた。

それから、学級委員会で谷さんという女の子がベトナム戦争の話をするのだけど、これも時代背景だなあ。

休暇を利用して現代のタエ子が山形へ向かうシーンで出てくる駅。おばあさんが新聞を敷いた上に座っているのも、わたし自身はみたことのない風景だけど、妙になつかしく思ってしまう。

 

 

ところで最後にこれを書いておきたいのだけど、タエ子の両親って、この時代としては普通なんだろうか。わたしからするとけっこうネグレクトな家庭…だと思う。

・学校で褒められたことを話すタエ子をさえぎって、給食を残すことを咎める母

・駄々をこねるタエ子、置いていかないでと家族を追いかけて外へ飛び出るんだけど、裸足だったので父がカッとなってタエ子の頬を叩くシーン(このときの父の怒る意味がわからなかったんだけど、原作コミックには、タエ子のみっともなさ、あさましさにカッとなったと書いてあるそう)

・言葉では敵わない年の離れた姉2人という存在

ネグレクトと言わないまでも、タエ子の気持ちもなんとなくわかる。

わたしならグレてたかもしれない。両親ともに、昭和の人間だなあと感じる…。

 

それにしても何度みてもほんとによくできた映画だなあ。

出てくるこどもたちみんな、出会ったことがあると思えるほどリアリティがあった。

あべくんのエピソードも、あべくんの気持ちを解説するトシオさんも素敵だった。

 

こども時代のことばかり思い出しているタエ子に、そろそろ、いまを生きないといけないんじゃないのと思うけれど、最後のそれが暗示される。

自分で電車を降り、トシオさんのもとへ向かったのだ。

もうそこからの「愛は花、君はその種子」という都はるみさんの歌う主題歌とともに流れる映像は涙なしにみれたためしがない。

 

それより、いまをときめく高橋一生が声優で出演というから、もしかして野球のうまいヒロくんかかっこよく描かれてる殿村くんかと思ったら、「三波伸介のモノマネをするクラスメイト」ということで、この太っちょの彼だったことに驚きを禁じ得ない…。

ここから「天沢聖司」だもの、よかったよねえ。

 

ジブリというと宮崎駿監督のほうが断然有名だけど、高畑監督の演出もかなり冴えてます。